【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.857~サダオさん受賞する~】
半世紀を超える長い付き合いだった、チン鈴木良雄(このコラムやジャズTOKYOなどに書いた追悼文、色々な方から感想を頂き謝・謝です‼️)を始め、ムレさん(中牟礼貞則氏)、渋やん(渋谷毅氏)など、知り合いや親しくさせてもらったジャズプレーヤー達が次々に逝ってしまう、寂しい感も強しの1年間である。だがこの1年は未だ終わる迄には少し間がある、果たしてこれからどうなるのか...、自身も含め何とも言えない。それだけにこのコラムも、故人について書くことも多かったのだが、少しは景気の良い...と言うかなにか心躍るニュースが...ジャズ界でも探さないと...と思っていた矢先、有りましたよ。有りました、格好の嬉しいニュースが...。Jジャズの生きるレジェンド~サダオさんこと渡辺貞夫さんが、この度文化功労者を受賞したと言うニュース。もう両手を挙げて、万歳三唱、そして拍手・拍手なのです。
なお文化勲章には、なんとあのゲームの"マリオ"の生みの親(ゲームをやらないので詳しくは分からないが...)の方が選出されとのこと。これまでの旧態依然とした選出対象が、今回かなり拡げられたことは、これからの日本の文化状況などを考えてみても、中々に良きことも言えそうだ。ただマリオの創始者が文化勲章ならば、我らがサダオ・ワタナベも、その世界的な知名度と文化・芸術への貢献度を考えれば、決して劣るものでない。こんな風に思うのは、果たしてジャズ関係者の一人である、ぼくだけなのだろうか...。まあいずれにせよこの受賞ニュースは、Jジャズ全体にとっても、大変に喜ばしいことなのは間違いない。またサダオさんのバンドへの参加が、実質的なプロキャリアのスタートになり、サダオさんから「チンさん、チンさん...」とも呼ばれ、愛され続けて来たチン鈴木良雄も、このニュースには草葉の陰で喜んでいる筈でもある。
そう言えばサダオさんとぼくとの付き合いも、かなりな部分がチン鈴木良雄を通してだった気もする。ぼくが初めてサダオさんの生演奏に触れたのは、彼がバークレー音楽院から帰国した直後の秋の早稲田祭でのこと。クラブの同期仲間で、元新宿「J」のオーナー兼マスターの幸田稔くんが、なにかサダオさんと個人的なコネがあリ、それを最大限に利用し、大胆にも早稲田祭のジャズ研部屋でのライブに招いた処、やる気満々のサダオさんは直ぐにOKの返事。狭い教室には「サダオ現れる...」というニュースが掛け巡り、超満員で身動きすら出来ない状態。部員のぼく等は、窓枠に捕まって鑑賞したものだったが、その時サダオさんと共演と言うかバックを務めたのが、早稲田モダンジャズ研の精鋭達。ギターの増尾好秋、ピアノの鈴木良雄と言う、大学生きっての凄腕がその場にいたのだった。この時のサダオさんの凄味ある演奏は、まさに伝説もの。窓枠に捉まって必死で聴いていたぼくも、顔にくっつく窓ガラスが、ビリビリと震える迫力タップリなサックスのプレーに、心底驚かされたものだったし、あれ以降もこんな驚愕のサックス音に出会うこと、まあ殆んど無かったと言える。
この伝説の早稲田ミニコンサートで、増尾ちゃんとチンさんの秘めたる実力を認めたサダオさんは、その後に結成することになるナベサダ・バンドに2人を招き、彼らは一躍ジャズ界の若きスターに躍り出ることになる...というジャズ界のシンデレラストーリーが実現することになるのだった。
まあこうした話をするとすごく長くなってしまうので止めにするが、サダオさんとはここから今に至るまで、色々関わりを持ち続けてきたが、残念なことに御大は「テイスト・オブ・ジャズ」本体には一度も出演が無い。どうして登場無しなのかは...、ここでは言わないが大変に残念ではある。但しジャズ特番としては全部で3回ほど、サダオさんにスポットを当てた1時間以上のスペシャル番組を組ませてもらった。その最初の折には、当然チンもマスオも登場しており、本当にぼくのディレクターになって直ぐの頃、若かりし頃の良き想い出でになっている。
その後も色々なところで関わりを持ち、今に至る...と言った付き合いなのだが、この夏にも軽井沢の大賀ホールでコンサート開催...と言うニュースを見て、久しぶりに追分の山荘から聴きに行き挨拶を...等と思っていた。だがなんとチケットは即完売とのことで、鑑賞は残念ながら叶わず。流石のサダオさん、こちらの甘い観測を打ち破る人気振りで、J-ジャズ界のモンスターそのもの。その威力には恐れ入ったものだった。
「これまで一心不乱に走って来ました。1951年に上京し(宇都宮出身)プロの道へ...。これからも自分の音を求めて邁進します」と受賞の言葉を述べたサダオさん。今世界中で一音吹いただけで、その存在を分からせられる、本当に稀有な存在でもあるサックス吹きのサダオさん。90才を超えても未だ元気で活躍しているその姿。放蕩のチャンジー(爺さん)を自認しているぼくにとっても、これからの人生の大きな励みになる処だし、いつまでも元気でそのモンスター振りを発揮し続けて欲しいものと、心から願っています。文化功労賞受賞、本当にお目出度う御座います。サダオさん!
【今週の番組ゲスト:BSMF RECRDS 代表の西村雅人さん https://www.bsmf.jp/】
M1「Caravan / Dee Dee Bridgewater & Bill Charlap」(『Elemental』より)
M2「Let's Have A Good Time / Count Basie Orchestra」(『Basie Swings The Blues 』より)
M3「Capri / Cindy Blackman Santana」(『COHERENCE』より)
M4「My Funny Valentine / Emmet Cohen」(『Universal Truth』より)







